最近はさっぱり本を読まなくなった。
これは、久々に読んだ本。




"How I caused the credit crunch" by Tetsuya Ishikawa

タイトルは扇情的なようで陳腐だが、2008年のサブプライムローン、その後の金融危機の中で現場にいた人が書いたインサイド・ストリー。(一応、人物や会社名などは架空で、フィクションという形になっているが。)

著者は、石川テツヤという日系のイギリス人。
オックスフォード大学を出て、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーで金融トレーダーとして働き、2008年の金融危機で職を失った。

金融バブルでの乱痴気騒ぎ(2007年度のゴールドマン・サックスの社員の平均給与は、日本円にして7,000万ほどだったそうだ)、金融危機のまっただ中で、仲間を裏切って自己保身をはかる人など、その人間模様なども面白い。

金融用語(finacial jargons)の解説もわかりやすく、著者はトレーダーの職を失っても、この分野で十分喰っていけると思った。
サブプライムローンの原因にもなった、ABS(資産担保証券)やCDO(債務担保証券)やMBS(モーゲージ担保証券)などの商品の解説もわかりやすい。

たとえば、MBS(モーゲージ担保証券)についての解説は、こんな感じ。

石川の知り合いで彼のメンターでもあったスイスの銀行家の話。
その銀行家は、7歳のときに金利をつけて友人へ金貸しを始めた。(7歳の子供が、友人に金を貸して利息をとるというのはいかがなものかと思うのは、日本人のぼくの感覚であって、何世代も続くスイスの銀行家の一族に生まれた彼にとっては、なんらやましい気持ちなどなかったのだろう。)

スイスの金融業の繁栄は、こうした文化風土の下にあるのかもしれない。

息子が金貸しを始めたことを知った銀行家の父親は、毎月のお小遣い以外に、年率1%の金利で息子にお金を融資することで、息子の事業を助けることにしたのだから。

息子は、手持ちのお金を最大限に活用しようと思った。
金貸しのためには、一定の現金を保有していることが必要だが、これらの現金は利益(利息)を生み出さない。
打開策として彼は、借用書を別の友人に売却して、現金を確保することにした。
たとえば、年利5%で1年後に償還される100円の借用書を、130円で売却することにした。
これで得た現金を、新たな融資に回し、貸し倒れのリスクも減らし、少ない元金で最大限の利益を出せるようにしたのだ。

石川によれば、リーマン・ブラザーズやソロモン・ブラザーズが販売していた、MBS(モーゲージ担保証券)やRMBS(住宅ローン債権担保証券)なども、これとまったく同じやり方なのだそうだ。

もちろん、借用書を売却するためには、お金がきちんと返済されるということを、友人たちに納得させることが必要になるが。別の言葉だと、債権の信頼性や流動性を保証されることが。
子供同士の狭いサークルの中では、購入者に直接会って、彼を納得させることも可能だろうが、多国間にまたがる巨大な金融市場では、どうやって購入者に債権の信頼性や流動性を納得させるのか。

これについても、いくつかのトリックが解説されていた。

一つだけ例をあげれば、100万の不動産に、90万の抵当付き債権が設定されている場合。
金融危機以前のアメリカでは、土地の値段は絶えず上昇している。100万の不動産に90万の抵当付き債権が設定されているとして、この不動産の値段が150万に上昇したときに、抵当権の額が以前のままだと、流動性は最初の10万(100万-90万)から、60万(150万-90万=60万)へと500%も上昇したことになる。

これをムーディーズやStandard&Poor'sなどの格付け機関に格付けしてもらえば、この抵当付き債権は、500%もの流動性価値が増したのだから、AAAという最高ランクのレーティングがもらえるそうだ。
こうして、もともとは信性性の極めて低い、サブプライムローンなどにも、第1級の格付けがもらえるようになるそうだ。

詐欺みたいな方法だと思わないでもないが、石川によれば、MBS(モーゲージ担保証券)やCDO(債務担保証券)は、このような方法で格付け機関のお墨付きをもらって、世界中にばらまかれたそうだ。これらが、サブプライム問題を引き起こし、金融市場のメルトダウンを引き起こす原因になったという。

この本は、金融危機の中で、その現場にいた人間のインサイド・ストリーとしては、おもしろく書かれていると思う。
ただ、石井テツヤは、英語があまりうまくないとも思った。読んでいて、リズミカルな心地よさがまったくないのだ。英語はネイティブのはずだし、イートン校やオックスフォード大学というイギリスの最高機関で教育を受けてきたわりには。。。
それとも、彼のもともとの母国語は日本語なのだろうか?

同じく金融危機を扱った本としては、The Big Short: Inside the Doomsday Machine by Michael Lewisの方がずっと面白いかも。。。
これは、石井テツヤとはまったく逆で、サブプライムローンが破綻する方に賭けて、空前の空売りを行い、金融危機の中で巨額の富を獲得する男たちのノンフィクション・ドラマ。

参考記事
【6627】テラプロープ
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